0と1の反復横跳び

日記や趣味のメモ。コンピュータ、旅、音楽に本。もちろんアニメと漫画も。そして車。

伊豆大島『これ描いて死ね』聖地巡礼の巻

まずは、アニメ化決定おめでとうございます!

とても不思議な感覚だ。

旅の1日目、夜にTwitterを見ていたら公式から発表があり、アニメ化決定とのニュースを知った。

原作の一ファンとしてとても嬉しい。

自分の好きな土地、風景が映像化される。

あの一コマが、登場人物たちの豊かな表情が、アニメになる。

これほどまでに喜ばしいことがあっただろうか。いやない。

今までは"聖地"として定義済みの場所を訪問するということが常だったけれども、 訪問したことのある場所が(それも訪問中に)聖地になる。これはとても稀なケースだろう。

とにかく。放映が今から待ちきれない。楽しみだ。

プロローグ

さて、本題だが、伊豆大島まで漫画『これ描いて死ね』の聖地巡礼に行ってきた。

とはいっても具体的にどこがどう聖地スポットなのか、というのを追っかけたかったわけではなく。

どちらかというと作者が何をテーマにしたかったのか、何故ここを舞台にしようと思ったのか。

そういった深層心理に触れたいと思い足を運んだ。

伊豆大島について

伊豆大島は"伊豆"と冠がついてはいるけれど、実際は東京都大島町に属する立派な"トウキョウ"である。

どうやら大昔には静岡県の管轄だったり、足柄県(今の神奈川や伊豆半島のあたり)として統治されていたこともあったようだけれど、今は東京都で、ナンバーは品川というちょっと不思議な地域。

面積的には大体山手線の圏内くらいで、結構縦に長いので、縦断するには車でも1時間くらいはかかるのだ。

人口も8000人弱と、伊豆諸島の中では以前訪問した八丈島と双璧をなす規模感である。

ざっと有名なものを列挙するなら

-> 活火山で、直近だと1986年に全島避難が行われた規模の噴火が記憶に新しい

  • 地層大切断面

-> 道路建設にあたり土地開発を行っていたところ、発見された地層。活火山なので、その噴火に伴う歴史が垣間見えるスポット

  • 椿

-> (温暖な気候故か、)島内全域に植生があり大島のアイコンになっている。他にも椿園という(国際的に権威のある?)立派な公園があり、多種多様な椿が鑑賞できる。椿を使用した製品も有名。

といった具合だろうか。

それ以外にもかなりの数の観光施設が点在している。もちろん温泉も。 新鮮な海産物に、マリンスポーツなどが堪能できる。(あと、忘れちゃいけない明日葉!)

アクセス&交通

来島手段

本州(都内)からのアクセスとしては大別して2通りがある。

-> 東海汽船が運航する、竹芝を夜に出港するいわゆる大型船(貨物などの物資輸送にも用いられる)、もしくは約2時間であっという間に到着する高速船がある。個人的には初めて島に行く人にはぜひ大型船を選んでもらいたい(往路だけでも)。日が昇る頃合いに全くの別世界に到着するあの感覚は島旅ならではだと思うので。

  • 飛行機

-> 調布飛行場より、小型機が日に2~3便あり。僕は搭乗した経験がないのだけれども、30分で到着するらしい(ほんまかいな)。著名人やメディアが来島する際はこちらがメインなのだろうか。

島内の交通手段

基本的に本州での旅行と大差はない。

(飲みに行くなら)タクシー、(のんびり行くなら)バス。

ある程度自由に動きたいなら、レンタカーかレンタバイク。レンタサイクルもあるが、坂がキツいのと、距離があるので個人的にはあまりお勧めしない。

僕の勧めはやはりレンタカー。

ソロで行くなら軽を借り出して三原山や裏砂漠、波浮港など各スポットを来訪すると面白いだろう。 *1

大島はちょっと変わったレンタカーの貸し出しもあり、軽スポーツカー(コペン)や軽SUVパジェロ(確か)も選ぶことができるので、ワインディングに舌鼓を打つもよし、裏砂漠を車で走るのも面白いだろう。

(因みに、東海汽船で来島するなら自前の自転車を持ち込むことも可能。ロードバイクで駆けている人も多くみた。)

来訪場所 & おすすめスポット

ここからは実際に僕が来訪した場所と、その中でもおすすめの場所を紹介したい。

波浮港

『これ描いて死ね』の巡礼をするなら絶対に外せないスポット。

全ての物語の始まりの地である。

元々は湖だったらしいのだが、海と接続され、小さな港町として栄えるようになったスポットである。

登場人物たちの住まいがあり、遊び場があり、部室がある。

港町なので、地元の人の漁船が何隻か停泊していた。 夕方にもなると、皆帰宅して宴会でもしているのだろうか。

サンセットをバックに。

漫研メンバーもこういう風景の中、数々の作品を生み出してきたのだろうか。

1. 見晴台

波浮見晴台バス停

作品内でも登場している見晴台。 波浮港が見下ろせる絶景スポットである。

バス停もあるので、波浮の学生はここから通学するのだろう。 他にはいい感じに年季の入った土産屋&茶屋さんもあり、巡礼の小休憩にピッタリ。

個人的に驚いたのが、外国人の観光客が多く訪れていたこと。

皆さんバスで訪問されているようで、 出帆港の岡田港や中心街の元町からはかなり距離があるはずだが、確かにこの情景は足を運んで見る価値があると思う。

2. みなとや旅館

明治時代より営業されていた旅館で、今は資料館として見学することができる。

『これ死ね』としては美術部員 藤森 心の実家の設定(のはず)。

(裏口なんかなさそうだから、表玄関から入るしかないと思うんだけどね。)

また、川端康成の『伊豆の踊り子』で登場する踊り子たちの出身地としても描かれているらしく、確かに当時の盛況ぶりは展示物からも垣間見えた気がした。

展示物に等身大の人形があるのだが、外国人の旅客が宿泊している様子が描かれており、開国以来、西洋人が日本の文化にどのように関わっていたのか、そんなことに想いをはせる。

3. 港寿司

ここは作中で大人コンビの寺島先生と貸本屋の寺村が一杯やりにいくお店。

小生も夕食にお伺いさせていただいた。

島で獲れた魚で美味しいお寿司を堪能させていただいた。

ネタが新鮮かつ大きくて食べ応えがあり、大満足。

これは島寿司といって、ネタが醤油漬けされており、またわさびの代わりに島唐辛子を練ったものを使う。

わさびとは違った風味がアクセントとなり、またいい塩梅にネタが漬かっているので、酒がよく進む。

酒はもちろん島焼酎のお湯割りで。風味が引き立つし、何より冬はお湯割りに限る。

個人的に美味いと思ったのが、自家製のお豆腐。

口の中で溶ける、という表現が正しい、余計な混ぜ物のないお手製豆腐はぜひ試してほしい。

大将も気さくな方で、ソロで行っても楽しめる良いお店だった。また行きたい。

4. 文学の散歩道

別名「膝殺しの坂」。(小生が勝手に名付けた)

要所要所で波浮を舞台にした作家の礎が置かれており、文学に想いをはせることができるスポット。

実際には波浮港と上の方のエリア(梵天とか踊子の里 旧甚之丸邸の方)を繋いでいる場所になっているようで、 作中でも度々登場している。(登下校中の場面とか)

恐らくは昭和に入ってから整備されたのだろうけれど、なかなか風情があり、また歩きごたえがある。

木々の間から見える波浮港がなんとも美しい。

詳細は下記を参照。 www.town.oshima.tokyo.jp

5. 梵天

作中でも"賄賂"として登場するたい焼き屋こと梵天

波浮のお店はいい感じの古民家が多いのだが、ここも相当年季が入っていると見受けた。

中は今風にリノベされており、喫食スペースあり。

僕が面白いな、と感じたのが床。

三原山火山岩を使っているのか、黒っぽい砂利が敷き詰められており、流石大島といった感じ。

肝心のたい焼きだが、外はカリッと中はふんわり。あんこも甘すぎず、確かに賄賂に丁度いい。

ちなみに、注文を受けてから焼き始めるようなので、時間に余裕を持って来訪することをお勧めする。

三原山&お鉢巡り

伊豆大島に行くなら外せない重要スポット。

作中でも漫画の資料集めのために三原山に登頂する様子が描かれていたと記憶している。

【公式サイト】伊豆大島・三原山温泉/大島温泉ホテル

登山ルートはいくつか存在するが 一番人が多いのは"山頂遊歩道"コースだろう。

三原山山頂口をスタートし、一気に山頂付近まで駆け上がるルートだ。

全体を通してコンクリート舗装されており、歩きやすく、国立公園ならではの風景が堪能できる。

(山のほうに行くと上記のような建造物が増える。どうやら噴火時の臨時避難場所と思われる)

前半セクションは平坦で、ただただ「三原山遠くね?」という感想しかなかったのだが、

魔物は後半にあった。

この山頂遊歩道コース、スタートが580mほどの標高地点なのだが、ゴールの鳥居が680mらしい。

で、算数をしてみるとざっくり7.5%くらいの勾配になる。 値的には大したことがなさそうなのだが、実は前半で若干下るのだ。

坂が始まる標高が546m位とのことなので、再度計算をすると、10%強。それはしんどいはずだ...

加えて、強風が待ち受けていることにも言及する必要がある。

火山口がカルデラ状になっている影響なのか、島ゆえに遮蔽物がないからなのか、明確な理由はわからないのだが、とにかく風が強かった。

頂上まで行くとカルデラの縁を一周でき、これをお鉢巡りと呼ぶらしい。

今回は命の危険を感じたのでお鉢巡りも半分くらいで切り上げたのだが、

とにかく、登頂した様子はこんな感じ。

島も一望できるし、まさに絶景。

ちょっと大変だけど、ざっくり1.5hほど見積もっておけば、山頂往復ができ、+1hでお鉢も一周できると思う。

今度は一周したいので、風の影響が控えめで、暖かい時期に再訪したいと思う。

*2

裏砂漠

三原山は現役の活火山で、次が近いのではないかと言われていたりもするわけだが、 この火山灰の影響でできたのが裏砂漠である。

いわゆる砂漠(アフリカなどのクリームっぽいそれ)とは異なり、黒い火山灰が降り積もってできたスポット。

触った感触としてはザラザラしている印象で、灰というよりは小石という印象を受けた。

結構足を取られやすく、雪道を歩いているような感覚であった。

ここも遮蔽物がなく、風をもろに受けるので来訪時は要注意。

おわりに

伊豆諸島巡りを始めてからというもの、いつかは行こうと思っていた伊豆大島

きっかけは漫画の聖地巡礼だったが、それ以上に良いものを体験させていただいた。

東京都心から簡単にアクセスでき、地球の偉大さを知ることができる良い場所だと思った。

正直、他にも書きたいことはたくさんあるのだが、あとは皆さんの目で確かめに行ってほしい。(単に書くのが疲れたとも言う)

聖地巡礼で来訪するならぜひ宿を波浮に構えて、街並みや風景、人々の生活に目を向けるとより一層作品への理解が深まるだろう。

またいずれ。近いうちに。

*1:島でのレンタカー台数にはかなり限りがあるため、早めの予約を推薦する。少なくとも1ヶ月前には要予約。オフシーズンならいざ知らず、夏はかなりの争奪戦になるはず。

*2:来訪時の風速が11m/sほどあったらしく、宿泊先のオーナーさんが、ガイドで登るのを止めたくらいの気候だったとのこと。安全第一で。